遠隔教育をめぐる動向

 情報技術が進展する中で文部科学省も,新しい技術を利用した大学教育に関する規制の緩和に積極的に取り組んできました。

 1997年には大学審議会の答申「『遠隔授業』の大学設置基準における取扱い等について」によって,通学制の大学の卒業要件124単位中,30単位までが遠隔授業を用いて修得することができるようになりました。

 翌年3月には大学設置基準が改正され,この単位は60単位へと拡大されました。

 2001年の大学設置基準改正の際には,「遠隔授業」の形式についても規制が大きく緩和されました (「大学設置基準の一部を改正する省令の施行等について(通知)」)。

 従来はテレビ会議のような形式が想定され,「同時かつ双方向に」行われなければならないとされてきたのですが,「同時かつ双方向に行われない場合であっても,一定の条件を満たしていれば,これを遠隔授業として行うことが可能」となったのです。

 また,電子メールやファックス,ホームページの掲示板などを利用して指導や意見交換を行うことも認められるようになりました。

 2003年1月に出された中央教育審議会答申「大学設置基準改正要綱」では,校舎や附属施設以外の場所で授業を実施できるようにすることも提案されています。


(資料)

「遠隔授業」の大学設置基準における取扱い等について(答申)
(平成9年12月18日)

http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/12/daigaku/toushin/971202.htm

 歴史をさかのぼれば,昭和22年に大学通信教育が学校教育法において制度化され,同25年に印刷教材を中心とした通信添削型の通信教育が正規の大学教育として認可されたのが,高等教育における「遠隔教育」の始まりであり,これに続いて,次々と通信教育が開設された。その後,昭和58年には放送大学が設置され,これにより,放送メディアを活用した新たな形態の「遠隔教育」が生まれた。こうして「遠隔教育」は通信制の高等教育機関において実施されてきたが,近年の情報通信技術の発展により,遠隔地間を結ぶテレビ会議式の授業という形で,通学制の高等教育機関においても「遠隔教育」を行うことが技術的に可能となっているのである。将来的には,マルチメディアの一層の進展により,通学制と通信制との境界を明確に分け難くなり,情報通信ネットワーク上でのみ授業を行う,いわゆる「ヴァーチャル・ユニバーシティー」といった全く新しい形態が出てくることも考えられる。

 大学学部の学生については,大学設置基準第32条に規定する卒業の要件として修得すべき最低限の単位数である124単位のうち,「遠隔授業」によって修得することのできる単位数は,当面,30単位を超えないものとすることが適当である。

グローバル化時代に求められる高等教育の在り方について(答申)
(平成12年11月22日)

http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/12/daigaku/toushin/001101.htm

  情報通信技術の飛躍的発展は「知」の創造や伝達の方法を大きく変化させるとともに,価値観や創造性の意味にまでも変容を迫っている。このような中で,大学教育においては,学生に,グローバルな広がりで,主体的に情報を収集し,分析し,判断し,創作し,発信する能力を養うことが不可欠である。その際,情報モラルや,情報機器及び情報通信ネットワークの機能にかかわる基本的知識や能力の習得を重視することが必要である。

  情報通信技術の発達と普及は,教員と学生の間のみならず,授業が行われている教室と国内あるいは海外の各地域の高等教育機関を結ぶことを可能とし,また,国内あるいは海外の各地域の様々な情報や資料を入手することを容易なものとしている。各大学においては,このようなインターネットをはじめとする新しい情報通信技術の有する機能を授業において積極的に活用し,授業の内容を豊富化・高度化する工夫を行うことが望まれる。

  情報通信技術は,学生の授業時間外の学習を支援するために活用することも可能である。本来,単位制度は授業時間外の十分な学習を前提としているものであることを踏まえ,単位の実質化を図るための教育方法上の工夫として,各大学において,インターネットをはじめとする新しい情報通信技術を活用し学生の学習支援に努めることが望まれる。

  通学制の大学においては,直接の対面授業を基本としており,これに相当する教育効果を有すると認められる一定の態様の遠隔授業については,卒業に要する単位のうち60単位を限度に単位修得が認められている。

大学設置基準

(授業の方法)
第25条 授業は,講義,演習,実験,実習若しくは実技のいずれかにより又はこれらの併用により行うものとする。
2 大学は,文部科学大臣が別に定めるところにより,前項の授業を,多様なメディアを高度に利用して,当該授業を行う教室以外の場所で履修させることができる。
3 大学は,第1項の授業を,外国において履修させることができる。前項の規定により,多様なメディアを高度に利用して,当該授業を行う教室以外の場所で履修させる場合についても,同様とする。
(科目等履修生)
第31条 大学は,大学の定めるところにより,当該大学の学生以外の者で1又は複数の授業科目を履修する者(以下「科目等履修生」という。)に対し,単位を与えることができる。
(卒業の要件)
第32条 卒業の要件は,大学に4年以上在学し,124単位以上を修得することとする。
4 第1項の規定により卒業の要件として修得すべき124単位のうち,第25条第2項の授業の方法により修得する単位数は60単位を超えないものとする。

文部科学省告示第51号 (平成13年3月30日)

 大学設置基準(昭和31年文部省令第28号)第25条第2項の規定に基づき,大学が履修させることができる授業等について次のように定め,平成13年3月30日から施行する。

 なお,平成10年文部省告示第46号(大学設置基準第25条の規定に基づき,大学が履修させることができる授業について定める件)は,廃止する。

平成13年3月30日 文部科学大臣 町村 信孝

 通信衛星,光ファイバ等を用いることにより,多様なメディアを高度に利用して,文字,音声,静止画,動画等の多様な情報を一体的に扱うもので,次に掲げるいずれかの要件を満たし,大学において,大学設置基準第25条第1項に規定する面接授業に相当する教育効果を有すると認めたものであること。

 1 同時かつ双方向に行われるものであって,かつ,授業を行う教室等以外の教室,研究室又はこれらに準ずる場所(大学設置基準第31条の規定により単位を授与する場合においては,企業の会議室の職場又は住居に近い場所を含む。)において履修させるもの

 2 毎回の授業の実施に当たって設問解答,添削指導,質疑応答等による指導を併せ行うものであって,かつ,当該授業に関する学生の意見の交換の機会が確保されているもの

大学設置基準の一部を改正する省令の施行等について(通知)
(平成13年3月30日)

 第7 平成13年文部科学省告示第51号(大学設置基準第25条第2項の規定に基づき,大学が履修させることができる授業等について定める件)等の制定

 1 大学設置基準第25条第2項の規定に基づき,大学が履修させることができる授業(いわゆる「遠隔授業」)については,平成10年文部省告示第46号により規定されてきたところであるが,インターネット等の情報通信技術の進展にかんがみ,従来のものに加え,毎回の授業の実施に当たって設問解答等による指導を併せ行うものであって,かつ,当該授業に関する学生の意見の交換の機会が確保されているもので,大学において,面接授業に相当する教育効果を有すると認めたものを遠隔授業として位置付けることとしたこと。

 したがって遠隔授業については,「同時かつ双方向に行われるもの」であることが必要とされてきたが,今回の改正によって,同時かつ双方向に行われない場合であっても,一定の条件を満たしていれば,これを遠隔授業として行うことが可能となること。

 また,ここで必要とされる指導については,設問解答,添削指導,質疑応答のほか,課題提出及びこれに対する助言を電子メールやファックス,郵送等により行うこと,教員が直接対面で指導を行うことなどが考えられること。

 なお,上記の指導は,印刷教材等による授業や放送授業の実施に当たり併せ行うこととされる添削等による指導(大学通信教育設置基準第3条第2項)とは異なり,毎回の授業の実施に当たって併せ行うものであることに留意されたいこと。

 学生の意見の交換の機会については,大学のホームページに掲示板を設け,学生がこれに書き込めるようにしたり,学生が自主的に集まり学習を行えるような学習施設を設けたりすることが考えられること。

 2 この告示の制定に伴い,従来の告示(平成10年度文部省告示第46号)は廃止すること。

大学設置基準等の改正について(答申)
(平成15年1月23日)

http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/030202.htm

  大学は、文部科学大臣が別に定めるところにより、授業を校舎及び附属施設以外の場所で行うことができることとすること。