3.1.2 UTP5

このUTPケーブルの構造は以下のようになっており、2本の銅線が一つに撚り 合わせられ、4対が入っているので、合計8本の銅線で構成されます。 (Cat.5 以上では4対が更に撚り合わせられています) 100BASE以下では、通信に用いられるのは4本までで、1対を送信に、1対を 受信に用います。一方、1000BASEでは8本全部を送受信に用いています。

4本しか使わず残りを使っていない理由は、初期においては電話線 に4本を使う事を考えたためです。

\epsfile{file=utp5-1}

さて、このような事を何故長々と話すのかと言うと、 ネットワークでの トラブルが、ケーブルとその配線に起因することが非常に多いからです(経験的には 50UTPケーブルにまつわる問題をきちんと把握しておく事が必要で、そのために 原理を知ることが必要なのです。

先に、同軸ケーブルがシールドされている事に触れましたが、UTPケーブルは その名の通り、アンシールド(Unshealded)、つまりシールドされていません。 では、どうやってシールドされていないのに大丈夫なのでしょうか。実は、 2本の銅線を撚り合わせている事に秘密があり、2つの点で効果があるように なっています。

一つは、平衡型と呼ばれる手法によって、外部のノイズに強くなっています。 一本の銅線にはプラスの信号を流し、もう一方の対になった銅線には同じ信号を 但しマイナスで同時に流します。この状態で、ケーブルの途中でノイズが乗った としても、プラス側では例えば5が信号で1がノイズの効果だと6になる訳ですが、 マイナス側では逆に -5 の信号に 1 のノイズが乗る訳ですので -4 になります。 すると、プラス側とマイナス側の差はノイズが乗らない時と同じ 10 の差です ので、結局ノイズの効果を打ち消している事になります(下図)。とは言え、余りにも 大きなノイズが来てしまうと役には立ちませんので、UTPケーブルを大電力が 流れる電線の近くや、落雷の恐れがある場所に張ってはいけませんし、大きな ビルでは落雷時のアースに落ちるまでの流れについても考慮しなければならい 時もあるでしょう。

\epsfile{file=utp-diff,scale=0.5}

2つめの工夫は、撚り合わせ自体にあります。これは、一般にクロストークと 呼ばれる、近くの通信からの影響を軽減することに役立ちます (最も近いのは送信に対する受信側の影響、あるいはその逆)。 何故ならば、銅線の中を通過する電気信号は簡単に言えば、電子の流れです。 そして、電子が動くとその痕跡が、まるで船の航跡が作るさざ波のように広 がって行くのです(正確には加速度運動に伴います)。 これが電磁波と呼ばれるものです。そして、航行する 船の近くを通れば、その波の影響を受けるのと同様に、この電磁波 を受けると、近くを流れる電子の流れも乱れます。ところが、先に平衡型では1対の 銅線にはプラスとマイナスが同時に流れていると説明しましたが、 このプラス側とマイナス側で作られる波は当然逆になっていますので、 うまく打ち消し合うように配置すれば完全に消すのは難しいですが、 かなり穏やかなものになるでしょう。 このような理由で、銅線は撚られているのですが、当然 コネクタ付近では撚りはほぐされているので、そこでは距離の差に伴う クロストークが発生 します。このために、規格ではほぐす場合でも 12.5mm以内(正確には0.5インチ) と規定されています。 従って、自作ケーブルなどでこのほぐしが多すぎるものなどは要注意であると 言えます。

参考

その他に、芯線自体による違いもあります。芯線が多くの細い銅線から なるもの(より線)をストランデッドと言い、一本の銅線からなるものをソリッド と言います。ストランデッドは柔らかく、取り扱いが楽ですが、品質的には 一本の銅線からなるソリッドタイプの方が上だと言われています。 そのために、ストランデッドタイプはラック内などでパッチケーブルとして 良く使われており、長距離を引く際にはソリッドタイプが利用されています。

さて、UTPケーブルと同軸ケーブルの決定的な違いは、送信と受信のラインが 分離されていることです。これによって、まず第一にトポロジー的な問題が 生じます(トポロジーは難しい言葉ですが、一筆書きや、あやとりの糸の ようなつながりを数学的に言った言葉だとここでは理解しておけば十分です)。 それは、同軸が同じ線に全てがぶら下がるのに対して、UTPでは送信と受信が 分離されているために、2台を結ぶ場合には送信と受信を入れ替えることで 対応できるのに対して(図)、3台以上を結ぶことは出来ないという点です。 勿論、ループ状にすれば出来ますが、それはUTPケーブルで結べたとは言えない でしょう。

\epsfile{file=utp-cross,scale=0.5}

参考

ちなみに、2台の間を結ぶ際には図のように送信ラインと受信ラインがクロス しているので、クロスケーブルと言います(最近はクロスとストレートを自動 で区別するスイッチもあり、AUTO-MDI/MDIXと呼ばれています。但し、これで トラブルが起こると非常に厄介で、ストレート接続を勝手にクロスと解釈され たりします)。

3台以上をUTPケーブルを用いて接続する際には、ハブと呼ばれる装置を用い ます。ハブは当初は共有型ネットワークの装置でしたが、その後スイッチ の登場によって重要な変化がもたらされます。それは、送信と受信がケーブル のみならず、スイッチを含む通信路全体で分離されたことです。これによって、 共有型ネットワークでありながら、1対1の通信に関しては占有型に近い 形態へとネットワークは変化したのです。

最後に、UTPケーブルの両端には、RJ-45というプラグをつけます(下図)。RJ-45には 8個の電極となる金属ブレードがあり、UTPケーブルの8本の芯線はこの ブレードに圧着によって接続されるようになっています。

\epsfile{file=RJ-45}

それぞれのケーブルのカラーと役割は10,100Baseでは 以下のように決められています(TIA/EIA-568B)。

ピン番号 役割 カラー
1 送信 (+) White( pair of Orange )
2 送信 (-) Orange
3 受信 (+) White( pair of Green )
4 None Blue
5 None White( pair of Blue )
6 受信 (-) Green
7 None White( pair of Brown )
8 None Brown

1000BaseTでは、8本全部を送受信に使うので、全てがきちんと結線されていなけれ ばいけませんので、注意して下さい。

(TIA/EIA-568A のカラーコードでは、Green pair と Orange pair が交換されます。) ストレートケーブルでは両端が共にこの配列になっています。

なお、標準規格はAの方で、Bの方は別名AT&T規格とも言われています。 実際にケーブルを自作してみると分かりますが、TIA/EIA-568Bの方がストレート が作りやすい規格になっています。ケーブルの自作で注意するべきは、緑のペア が青のペアをまたいでいる点にあります。それ以外は全てペアが隣に並んでいる ので、この部分をしっかりと作るのが最大のコツだと言えます。 筆者のお勧めの方法は、まず緑ペアのみをほぐして、緑が青をまたぐ部分のみを 先に作り(図参照)、後は順番にほぐしていく方法です。



Noriyo Kanayama