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社会人のための大学講座第1回

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稚内北星学園大学がお送りする、「社会人のための大学講座」。
第一回は、「テレビに気をつけよう」 
このテーマで、地域創造学科の斉藤吉広がお話しします。

男性ですと40代以上、女性ですと30代以上の方は、1日当たり3時間以上テレビを見ているというのが、平均的な姿です。

テレビが貴重な情報源であるというのはもちろんのことですが、テレビによって与えられるイメージというのはとても強力で、疑いを差し挟むのが難しいという一面も持っています。

その結果、テレビによって与えられた 誤った事実やイメージを、そのまま本当のことだと信じ込んでしまっているかも知れません。

例えば、こんな風に思っていないでしょうか。
「少年犯罪は、急増・凶悪化している」 あるいは「昔の少年犯罪は、お金とか恨みとか 動機が分かりやすかったけれども、最近は“人を殺してみたかった”などという訳のわからないものになった」

いかがでしょう。

一つ、実際に起きた事件を紹介します。

大阪市阿倍野区で、乗り捨ててあったタクシーのトランクからこの車の運転手の他殺体が発見された。運転手は鋭い刃物で、後頭部13ヶ所、右肩7ヶ所を刺されていた。
犯人は名門の府立高校に通う17歳の少年で、逃亡しパチンコ店に住み込みで働いていたところを逮捕された。
少年には反省の色はほとんどなく、「運転手殺しをやってみたらどうかな」とかなり前から考えていた。
「ただサラリーマンになって漠然と生きていても、人間としての意味が無い。そこで何か思い切ったことをやりたかった。スリルを味わいたい気持ちもあった」と語ったという。

名門高校の生徒が、「思い切ったことをやってみたい」という動機でタクシー運転手をめった刺しにして、つかまっても反省の様子はなかったという事件です。

「やはり最近の子どもの犯罪はわけがわからない」と思われたでしょうか。

実は、今紹介した事件は、1964年に起きたものです。1964年に17歳ですから、現在65歳くらいの方が犯した犯罪です。

1928年、戦前には、真面目で模範的な少年が「自分が命を投げ出したら何人くらい殺せるものか」と家族と隣人4人を殺し、3人にケガを負わせたという事件もありました。

これらの、高度成長期や戦前に起きた殺人事件の動機ははたして「分かりやすい」でしょうか。
今、起きたとすれば、「訳がわからない」と感じるような事件ではないでしょうか。

「最近の子どもの凶悪犯罪は理解しがたいけれども、昔のはわかりやすかった」とは必ずしも言えないと私は思います。

次に、少年による凶悪事件の量の問題です。

「少年の凶悪犯罪が増えている」というのは常識になっているようですが、そのような事実はありません。
数十年前に比べると、事件数は明らかに減少しています。

警察統計では、「凶悪犯罪」とは殺人、強盗、強姦、放火の4つですが、少年による殺人が最も多かったのは1960年ころのことです。
その後1970年を過ぎたあたりまで急速に減少して4分の1以下になり、現在に至るまで横ばいという状況です。

強盗は、1948年のピークに比べれば現在はやはり4分の1、強姦は1958年から65年にかけて非常に多かったのですが、その後劇的に減少して現在は何と10分の1くらいになっています。
放火の減少傾向は、大きくはありませんが、減少傾向です。

以上、「凶悪犯罪」とされる殺人、強盗、強姦、放火の4つについて、少年による犯罪の動向をお伝えしました。それぞれ減っているのですから、少年による凶悪犯罪の合計も当然、減っています。

グラフを見ていただければすぐにわかることなのです。

では、「少年犯罪が急増・凶悪化している」という誤った見方が常識化しているとしたら、それはなぜなのでしょう。

それは、「テレビがそう言っているから」です。

少年による犯罪が起きると、テレビのニュースやワイドショーの司会者やコメンテーターは

「少年犯罪の凶悪化はとどまるところを知りませんねぇ」とか「凶悪化の背景には何があるのでしょう」とか
少年犯罪の凶悪化を前提として語ります。

そして、長い時間をかけて繰り返し、テレビはそういうイメージをふりまきます。

コメンテーターも、事実を知っていたとしても、「昔よりはましですよ」などとは言いにくいのでしょう。

そうして、

「少年の凶悪化の背景には、テレビゲームがあるのではないか」

「道徳教育がなっていないからではないか」

「少年の罪が軽すぎるからではないか」

といった “原因探し” “犯人捜し”が始まることによってさらに、「少年の凶悪化」自体は議論の余地のない事実であるかのように扱われます。

テレビが普及し出したころに比べると、「じっくりテレビを見る」ということがなくなってきてはいないでしょうか。
何かをしながら何となくテレビをつけていたり、“ボー”と見ていたり。

すると、たまに刺激的な画面や言葉があると、そこに反応して 吟味することもなく受け入れてしまう。

テレビ番組を制作する側も、何とか視聴者の注意を引き留めようとさまざまな工夫をします。

貼った紙を順にベリッとはがしていったり、テロップを多用したり。

そうした結果、テレビはますます、「何となく」見ていても「わかりやすい」ものになっていき、「わかりやすい」分だけ、その通りのイメージが頭に残ることになるでしょう。

さらに、テレビは視聴者を引きつけるために危険や恐怖を煽りがちだという傾向を持っています。

アメリカでの調査ですが、テレビをよく見る人ほど犯罪発生率が上昇していると信じ込んでおり、テレビをよく見る人ほど、自分自身が犯罪被害者となる可能性を大きく見積もっているのだそうです。そして彼らは、さまざまな危険から身を守るためにいくつもカギを購入し、アラーム装置を取り付け、最後は、アメリカですから、銃を買い込む。

最初に申し上げたとおり、テレビは貴重な情報源です。ただし、そこで伝えられることがすべて正しいとは限りません。

何かほかのことについても、テレビによって与えられた誤った事実やイメージを、そのまま本当のことだと信じ込んでしまってはいないでしょうか。

そういった目でテレビとつきあってみると、何か新しい発見があるかも知れません。

以上、稚内北星学園大学の斉藤がお送りしました。

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